14号(7/6号) トラ応援歌の裏側

ひとりの演歌歌手がいる。伊藤秀一さん、50歳。その伊藤さんがタイガースの応援歌を自主制作盤CDで出す。タイトルは『燃えろ!タイガース』、7月21日の発売だ。1500枚の限定制作で費用はざっと120万円。ポスターやチラシも作った。ジャケットのデザインも出来た。それらの制作費は、阪神ファンの仲間たちのボランティアだった。

 ところがここに大きな問題が持ち上がった。阪神球団の「承認問題」である。CDを完売しても45万円の赤字の上に、税込42万円の契約料は、どう考えても痛い。彼はツテを頼って球団と交渉して貰った。一律42万円という承認料が少しでも安くならないだろうかと。球団営業サイドは「特例」を容認してくれた。

 これで大丈夫だ。「阪神もエエとこあるやん」そう痛感した。が、阪神という会社、そう簡単には彼の夢を叶えてはくれなかった。阪神○○インタナショナルという、球団の版権管理会社がある。結論から書けば、その会社から突然「承認料を支払って貰いたい」という旨の契約書が、ファックスで彼の元に送られて来たのだ。「これは規則ですから」。同社の見解であった。もとより、球団のロゴマークなどはどこにも使用していない。彼は決断した。「ゲリラや」。

 神戸の民放U局で月に一度、日曜深夜に放映されている演歌の番組がある。その局は、阪神のゲームを試合終了までやることで有名だ。阪神ファンの彼には、それ相応の思い入れがあった。「まずこの番組で、この歌を唄いたい」という気持ちから、番組関係者の知人を介して、プロデューサーに会った。が、返って来たのは「唄うには15万円必要です」という信じられない言葉だった。

 そんな彼を、関西TV が追った。阪神ファンにはお馴染みの『なにぬねノムさん(毎週土曜午前10時55分から)』という番組の中でドキュメンタリーとしてとりあげるという。制作担当の山岡プロデューサーから「お手数をおかけするかも知れませんが、よろしく」という丁重な挨拶があった日の夜、彼は人知れず泣いた。

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